Zooey100’s diary

りんごちゃんを育てたり、映画観たり、小説書いたり、フィギュアスケート観たりするアラサーのブログ

デニス・テン選手一周忌〜名演技を振り返る〜

先日、noteで公開した映画音楽について語った記事で、エンニオ・モリコーネによる『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマ曲「Cinema Paradiso」について触れました。
 
この曲は『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマとしてももちろん素晴らしいですが、フィギュアスケートのプロクラムとしてもよく使われています。
そしてそのプログラつのひとつに、昨年の7月19日に25歳の若さで亡くなったデニス・テンのものがあります。
おそらくそのために、「Cinema Paradiso」の曲を聴いているうちに、ものすごくテン選手の演技が懐かしくなってしまい、しばらくずっと動画を見漁っていて、彼の命日に合わせてここでも彼や彼の演技について紹介したいと思いました。

さて、デニス・テンカザフスタンフィギュアスケート選手。
日本人スケーターとも親交が深くて、特に同じ時期にタラソワコーチ、ローリー・ニコル振り付けの元で練習していた浅田真央選手や同じDT仲間(?)の高橋大輔選手とはとても親しかったようです。
また、2013年世界フィギュア銀メダル、2014年ソチオリンピックでは銅メダル、2015年四大陸選手権金メダル、世界フィギュア銅メダルなど、実績もあるスケーターでした。
 
私は15、6年前から比較的ライトなフィギュアスケートファンなのですが、あまり観なくなってしまった時期があり、テン選手が活躍しだしたのがちょうどその頃だったので、はっきり彼を認識したのは実はソチオリンピックの頃です。
バンクーバーオリンピックにも出場していたようなのですが(出場選手の中で最年少の16歳)、ここではあまり注目できず…。
けれど、あとから動画を見てみたら、まだ発展途中だったこの頃から上半身も含めよく動く所などテンくんらしさが出ていました(個人的に上半身のよく動く選手好きです)
動画はショートプログラム

TORINO 2010 24/03/2010 - MEN Short Program -17/18- KAZ Denis TEN - YouTube

(ちなみに、なぜか動画のタイトルがトリノになってますが、バンクーバーの動画です)
 
それから3年後の2013年、デニス・テンはメダルという意味ではほぼノーマークだった時にショートプログラムで当時無敵かと思われていたパトリック・チャンに次ぐ2位につけ、フリーではチャンを上回る点をマーク。
総合点では僅かに及びませんでしたが、それでも堂々の2位に輝き、母国に初めて世界大会でのフィギュアスケートのメダルをもたらしました。
動画はフリープログラム。

Denis TEN (KAZ) FS - WC 2013 - YouTube

情熱的に踊るプログラムではなく、紳士的に軽やかに魅せるタイプのプログラム。
それでも見入ってしまうのは、滑りのノーブルさ、サラッと見せる細かな動きや姿勢の良さがたいへん魅力的だからだと思います。
抑えた軽妙な演技でも、所作の一つ一つが美しく音を捕らえています。
ジャンプも安定していて、ランディングまですごく綺麗。
 
順番が前後してしまいますが、2011年度のエキシビションで披露したのが、「Cinema Paradiso」。
振り付けはオレンジゼブラな独特の色合いの衣装を纏って「四季」を演じ、トリノオリンピック銀メダルに輝いたステファン・ランビエール(ランビの四季大好き)。

Denis Ten - Cinema Paradiso (Almaty, 17.06.2011) - YouTube
 
この演技を見てまっさきに思うのは、なんて音楽と一体となった繊細かつ情熱的な演技をするのだろう、ということです。
ちょっとした動きにも気品を感じさせる演技で微妙な距離をとりつつ音を捉えていく前半と、音楽が高まってきた所から演技と音が渾然一体となったような見事な調和を見せる中盤以降。
体全体を使った動きも美しくて本当に素晴らしいと思います。
すごく綺麗かつ音楽を捕らえたイナバウアーは彼の美しい姿勢の賜物。
そしてなんと言ってもツイズル!
ステップの際のツイズルが本当にかっこよくて音楽を捕らえると言うよりも動きで音を奏でている感じです。

そして2014年のオリンピック。
はだけた胸元に赤いネクタイ(裸にネクタイ…)という謎の衣装で登場したテンくんは、ショートプログラム9位からの巻き返しを狙うフリーでした。

動画のコメントにもありますが、テンくんの滑りは気品があり紳士的なのだけど、同時に男性的な情熱も感じられます。
この演技ももちろんその魅力が存分に楽しめるプログラムです。
手足の使い方はしなやかだけれど、ひとつひとつの動作がピシッと決まるその演技から受ける印象は、女性的な美しさより紳士的な凛々しさ。
クリーンに決まっていくジャンプもランディングまで綺麗でかっこいい。
どれだけ動いも乱れない美しい姿勢、だからこそ保たれる品の良さ。
丁寧でもよく動き、思い切りの悪さは全くありません。

そして2015年の四大陸選手権
彼のマークした最高得点がこの時の演技です。
その点に見合った素晴らしい演技で、念願だっただろう金メダルも獲得しました。

2015 4CC _ 20150214 Denis TEN LP Men's Single (Fuji) - YouTube
いきなり持ち味の一つである(と私は思っている)ツイズルから始まる演技は最初から最後までかっこいい。
特に後半、音楽が高まってきてからは次々決まるジャンプがメロディの高揚感と見事に調和しています。
丁寧だけれど音楽に負けない情熱も感じ、体もよく動いているしスピード感もあって、本当に素晴らしかったです。
 
本当はもっとたくさん書きたいのですが、今回はこのくらいにして、また別の機会にエキシビジョンなどの演技についても触れたいと思います。

ドラえもんの世界観を大事にし、直接語らない心の内を掬い上げる優しい映画『ドラえもん のび太の月面探査記』

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3月のことですが、りんごちゃんと『ドラえもん』映画最新作、『ドラえもん のび太の月面探査記』を見てきました。
正直、前作の『宝島』が驚くほど自分にはハマらなかったので、期待値のめちゃくちゃ低い状態で見たのですが…


めっちゃ面白かった!


ので、遅ればせながら、『ドラえもん のび太の月面探査記』の感想を書いてみたいと思います。

「映画ドラえもん のび太の月面探査記」予告2【2019年3月1日(金)公開】 - YouTube


■『ドラえもん』らしい世界観

ドラえもんの面白さのひとつには、もちろんひみつ道具の魅力があるでしょう。
けれどそれは、単にいろんな便利道具が出てきて面白い、というだけではありません。
興味深い機能を持った便利道具と、それを使う者が凝らす工夫(時によっては失敗)とが合わさることで、思いもよらない事態に発展していく、それが楽しいのです
 
こののび太の月面探査記』にはそういう楽しさが随所に見られます。
月でウサギのような生き物「ムービット」を作り出してウサギ王国を作ってみたら、想像を遥かに超えるスケールのものが完成したり、失敗と思ったウサギが予想外のところから出てきてしまったり…。
また、ひみつ道具は思いがけない形で終盤の展開に絡んでもきます。
そして、それがあるからこそ、ウサギ王国もムービットたちも大活躍できるのです。
ひみつ道具とそこから生まれたものをきちんとメインストーリーの中で機能させていく辺り、ドラえもん』の世界観を大切にしていることがよく伝わってきました。
 
ドラえもんらしさ、ということで言えば、細部のユーモアも見逃せません。
ムービットたちが出してくる料理がほぼ餅ネタであるところなど、なかなかにシュールで面白い。
のび太が死んでしまったのではと勘違いした時のドラえもんの様子も、スネ夫がルナとの別れを惜しむ(?)所も、彼ららしい個性で笑わせてくれます。
 

■描かれる物語 そこに滲むドラマ

さて、肝心のストーリー についてはどうか。
まず、物語の大筋は非常に良く練られていました
メインキャラ(と、それぞれに持っている小ネタ)は敵キャラも含め無駄遣いされることなく、みんなストーリーの中で活躍します。
誰が欠けてもお話として成り立たないくらいに作られていて、これだけ登場人物が多いのにと、感心します。
 
ドラマとしては、どうでしょう?
実は大げさな感動ストーリーは、あまりありません
 
月にやってくることになったエスパルたちの過ごした時間がいかに辛かったか、その時間の中でエスパルたちの間にどんなドラマがあったのかなどは、特別なエピソードとしては語られません。
けれど、直接語られなくとも、月面という無機質な土地の画があれば、そこで息を潜めて何千年という単位の時間を過ごす苦しさは十分に伝わってきます
個人的な好みになりますが、苦労話をねじ込んで、安易な感動へ持っていくよりは、岩があるだけの月面で時間を過ごすしかないことの途方のなさを感じさせる描き方の方が、哀愁が伝わってきていいなと思います。
 
これもごく個人的な見解だけれど、今回のドラえもんの最も良いところは、こういう所ではないかと思います。
よく振り返ってみると、意外にも、いくらでも語れそうなことを語っていない箇所が多い

例えばスネ夫エスパルたちを助けに行くのをためらう場面
彼がウロウロしながら迷っている様子が映し出されるだけで、彼が思いの丈をぶつけるシーンもなければ、迷いを振り切るきっかけが描かれているわけでもありません。
それでも、観ている側には彼が思っていることが、ちゃんと伝わってきます。
友人を助けたい。でも怖い。ルナちゃんを助けたい。エスパルたちを助けたい。でも怖い。ルナちゃんを助けたい。ルナちゃんを助けたい。ルナちゃんを助けたい。怖いけど、ルナちゃんを助けたい。そう思っているに違いないのです。
彼がそういう気持ちを表に現すことはありませんでした。
その代わりに、彼は出発の時間に遅れてしまったことを、言い訳をして誤魔化します。
みんなを助けたいけどそれをするのは恐ろしい、という葛藤を抱きながら、そういう気持ちを知られたくないという彼なりの見栄が、彼の感情をより愛おしいものにしています。

感情をぶつけ合うことだけがドラマではない。心に秘めておくこと、その思いをそっと掬いあげていくことにも、やはりドラマはあるのだなと感じました。

同じように、それぞれがそれぞれに心に秘めていることがあるのだろうと窺えるシーンがとても多い。
特に、ゲストキャラクターのルカにはそれが顕著です
そして、そういうシーンが、この物語へ切ない味わいを与えています。 
というかルカくん超かわいいですよね…
最後にのび太とハグするとことか、萌え死にます。
  
また、日常の些細なところに潜んでいる愛情や優しさをしっかり掬いあげているのも好きでした。
おやつを準備しておくという、日々の生活の一部にある優しさを、そっと取り出してみる。
そうやって観る側の気持ちを解くような場面が多い所も素敵でした。

ラスト、自らの判断で『異説クラブ』を解散する、もう二度と月には来ないと決断するのもとても良い。
否応なくそうなってしまうのではなく、寂しくてもそうすべきだと自分たちで決めることに、大きな意味がある場面でした。

また、主題歌がとてもいい。
イントロからもう優しさと切なさが漂う曲調で、作品の持つイメージにめちゃくちゃあっていました。
歌詞も映画のストーリーと重なり、エンドロールで流れると本当に感慨深かったです。
歌詞と曲調がとてもよくマッチしていて、それが映画にもぴったりハマるという。

平井 大 / THE GIFT (Music Video) - YouTube


■『月面探査記』と好対照なのは…

余談になりますが、この『月面探査記』と好対照で面白かったのが『新・鉄人兵団』です。

『月面探査記』がかなり女性向けであるのに対して、『新・鉄人兵団』は男性向けです。
ゲストキャラクターが美少女であることも(『月面探査記』は美少年)、人型の大型ロボットが活躍するところも(ザンダクロスのカッコいいこと…)。
また、ドラマ部分に関しても、『新・鉄人兵団』はお互いの感情をぶつけ合うところから生まれるドラマに焦点が当たっていました。
どちらも面白い作品ですが、これだけ真逆のことを同じ世界観で描いて、なおどちらも優れているというのは、描き方は無限大だということの表れのようにも感じました。

デニス・テン選手について

 書こう書こうと思っていて、なかなか手をつけられずにいた記事です。
 テレビでもかなり取り上げられていたのでご存知の方も多いと思いますが、7月19日、カザフスタンフィギュアスケート選手、デニス・テンが亡くなりました。まだ25歳。素晴らしいスケーターであるだけでなく、多才で、行動力があり、たくさんの人から慕われていて、大好きな選手でした。私は十数年前から比較的ライトなフィギュアスケートファンなのですが、その十数年観てきた中で、テン選手が最も好きでした。しかもダントツで。


テン選手の一番の魅力は姿勢の良さ

 彼の演技の何が好きか。理由は沢山ありますが、一番は姿勢の良さです。本当に「美しい姿勢」というのがぴったりくるほど綺麗に背筋が伸びていて、それが彼の演技に気品と凛々しさを与えていたと思います。特に、ステップの時にやるツイズルにそれは顕著に表れていて、こんなにツイズルってかっこよくなるんだ! と軽く感動します。デニス・テンのツイズル最高です。最高です。大事なことなので何回も言います最高です。


音楽との微妙な駆け引き よく動く上体

 音楽表現にも優れたスケーターでした。彼の演技は音楽との間の微妙な駆け引きから始まって、音楽が高まっていくにしたがってそれらが重なって、一番曲が高まるところでは、演技と音楽が渾然一体となっている感じがします。そして、そういうところで出てくるんです、ツイズル。最高かっこいい最高。
 上半身の使い方もすごく好きです。私はスケートを観る時、おそらく上半身を中心に観ています。ですから上体がよく動く選手が好きです。テン選手は美しい姿勢を保ちながらも、上半身がよく動きます。その動きは滑らかだけれどメリハリがあり、よく緩急がつけられていて、観ていてとても楽しいです。
 

スケーティング技術

 スケーティング技術も高いです。上半身中心に観る、と書きましたが、やはり足元の滑らかさはスケート観てたら目につきます。たぶん、足元を中心に見る人はパトリック・チャン選手小塚崇彦選手が好きなんだと思います。チャン選手が滑ってる時なんて、もう、ツルツルツルツルーって感じですよ、いやむしろトゥルトゥルトゥルトゥルーですよ、滑らかすぎて。凄いですよね本当にそう思います凄い。
 テン選手もチャン選手程ではないですが、伸びのある気持ちのいいスケートをします。足元が拙いと上体の良さも損なわれてしまうと思うのですが、そんなことは一切ありません。
 

高い身体能力

 そして、身体能力がめちゃくちゃ高いです。私が見てきた中で、この動きめちゃくちゃ身体能力高くないとできなくないか、と思った選手はテン選手とフランスのフローラン・アモディオ選手の二人だけです。アモディオ選手って、動きがフィギュアスケートっぽくないと言うか、特殊なんですよね。普通はできないからしないのが当たり前の動きをなぜかすると言うか。よく分かりませんがユニークな選手で好きでした。ジュベール選手が好きだったので、出てきた時は、くっ、フランスに新星が来てしまったって思いましたが。
 ともあれ、テン選手のよく動く上体というのは、たぶんこの身体能力の高さゆえなのだと思います。エキシビションなんかではそれが顕著に表れますね。うわ、危ない!と思う動きを平気な顔でサラッとやります。そういうのもかっこいいなと思うのでした。
 
 何かもっと書きたいような気がしますが、とりあえず思いついたことを書いてみました。とにかく私はデニス・テンが大好きです。テンくん…。

おすすめの写真&小説サイト

前回の記事からかなり時間が空いてしまいましたが、今回も趣味で書いている小説関係のお話です。
お世話になっている方がご自身の小説や写真をアップされているサイトをご紹介したいと思います。


うさぎの森 – ……ひっそりと小説とスナップ写真のサイト。

夜野うさぎさんの小説と写真を中心としたサイトです。


■風と光を感じる写真たち

写真は「風写真」という言葉のとおり、風や光を感じるものがたくさん。
すごく綺麗なのでぜひぜひご覧ください。


「風写真」へダイレクトに行くならこちらから↓
風写真 – うさぎの森


■小説のお話は作品の背景や執筆に役立つ情報が盛りだくさん

小説に関しては、作品公開だけでなく、作品を書いた背景(というか裏話?)や執筆に役立つ情報などを書かれているので、創作に興味のある方にはおすすめです。
私はネット関係はものすごく疎いので、こういうの助かります(;´ω`)


■小説作品『狐のユッコの大冒険』をおすすめ!

もちろん、公開されている作品もおすすめですよ!

うさぎさんの作品は、設定や構成などを丹念に作り上げたことが分かるものが多いです。
短編は美しい文章構成とキャラクター配置が魅力だし、長編はスケールの大きさと多様なキャラクターを生み出すイマジネーションは特筆に値すると思います。

と、うだうだ私が書いてもよくわからないと思うので、読ませていただいた作品をご紹介します

タイトルは『狐のユッコの大冒険』
姪っ子さんのために書かれたという児童向けの作品



九尾の狐のユッコがうっかり(?)異世界へ召喚されてしまい、そこでの戦いに巻き込まれていく――というか暇なので見守ることにする。



というお話です。



すぐに読みたい方は、こちらから↓
狐のユッコの大冒険 – 冒険者見習いのコハルが召喚したのは、……九尾のキツネの私。


おすすめポイントをまとめてみましたので、ちょっと気になる、という方はこちらを読んでから、どうぞです↓


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よく練られた設定の元に描かれていることが分かる楽しい作品です。
 
まずは世界観
異世界から異世界への転生というと、かなり世界観の構築が難しくなってくるような気がしますが、転生先の世界を中心に細かく描かれていました
RPGを彷彿とさせる箇所が多く、ゲーム好きは読んでいて嬉しい部分も多いのではないでしょうか。
 
また、キャラクターも、それぞれに面白い設定を与えられています。
読んでいて、新たなキャラが登場する度に「何が起こるんだろう?」というワクワク感を味わえて、作品の楽しさをより高めていました。
こういう心の踊る感じは、子どもには特にアピールするように思います。
 
さて、とりわけ、主役の狐、ユッコのキャラクターはなかなか見ない面白いものです。
『狐ユッコの大冒険』と題されると、まず頭に思い浮かぶのは世間を知らない子狐が冒険に出て成長していくという王道ストーリー(だと私は思います)。
「ユッコ」なんて可愛い名前をつけられていたらなおさらです。
ですが、この作品のユッコは規格外の力を持った神獣
このギャップがなかなかユーモラスだなと感じました。
また、ユッコが最強であるが故の余裕が面白く、みんなが苦戦している中、呑気でとぼけた語りで読み手を楽しませてくれます。
そして、力を見せた時の鬼神のごとき強さは圧巻で、スカッとさせてくれることは間違いありません
さらに、子ども向けの読み物として見ると、「神獣のユッコがいてくれる」という安心感は心強いものです。
ピンチの場面に差しかかっても怖い思いは少なく、むしろ「ユッコがどんな風に解決してくれるのだろう?」という期待感を持って読めるので、安心して読み進めることができるはずです。


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その他の作品も、こちらからどうぞ↓
私の書いた小説作品 – うさぎの森



写真も小説もとても素敵でおすすめなので、ぜひご覧ください。

「小説家になろう」で参加している企画について②

さてさて、前回の続きで、「描写力アップを目指そう」企画の感想です。
詳細はこちら↓
【習作】描写力アップを目指そう企画
早速書いていきます。

■視覚よりも、さらに映像を浮かび上がらせる聴覚による描写

その場の画を彷彿とさせるためには、視覚を中心にした描写をすべきかと思いがちな気がします。
ですが、実は聴覚をうまく使うと、視覚に訴えかける以上に、ありありとその場面の映像が浮かび上がってくることがあります。
『落日のディーランドジア』はその良い例です。
冒頭のオノマトペから兵士の踏み鳴らす足音、上げる声、そしてラストの静寂の中の鷹の鳴き声まで、空間の広がりがたいへん良く表れていて、映像がぱっと脳裏に浮かんできます。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 落日のディーランドジア (七ツ樹七香 作)
 
 

■ ファンタジーでは、特有の「生き物」を描き出すことで世界観が立ち上がってくる

前回も書きましたが、ファンタジーの描写には想像力が不可欠。
中でも、ファンタジーならではの生き物、種族の姿や雰囲気が、読み手の目に浮かんでくるようなものだとワクワクしてくるでしょう。
葵生りんさんの無題の作品で描かれる竜兵は、その姿、出で立ちもさることながら、あげる声、石のような態度などがよく描かれていて、ありありと浮かんできました
また、その竜兵の姿や様子が(描写企画にアップされている部分だけで言えば)作品の魂に関わっていく重要な要素となっていて、描写が作品そのものをしっかりと支えている良い例だと思います。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (葵生りん 作)
 

同じく、ファンタジーならではの生き物の姿をありありと映し出したのが『竜剣鍛製』
竜が好むとされる血の臭いから始まり、その巨躯が落とす陰や、眼、爪などに竜が纏う不吉さが表れていて、作品の雰囲気を作り出していました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 竜剣鍛製 (Veilchen 作)


■「画」の面白さにも色々ある!

前項でも触れた、描こうとする「画」の面白さが『煩わしき六の縁』では爆発。
特に龍の姿をした奔流と大きな火との対峙はたいへんダイナミックです。
描写もそれに見合ったもので、非常に細やかな皮膚感覚で描いている作品が多い中、戦闘描写はかなりドライ
特に動きのある場面では、装飾はあまりなく、短文や単語を重ねる傾向があるように思います。
それによって、スピード感と力強さを損なわせないようになっています。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 煩わしき六の縁 (甲姫 作)/ 
 

一方、誰もが目にしたことのある王道の「画」を臨場感たっぷりに描くのも、もちろん心が踊ります。
水浅葱ゆきねこさんの無題の作品は、まさにそういう作品。
特に、炎の剣の描写は、例えばドラゴンクエスト』の世界で描かれる「画」―――これが皮膚の感覚までしっかりと捕らえながら鮮やかに蘇ってきて、読んでいて非常にワクワクします。
冒頭の「浮遊感」「落下感」などの体感から始まるところにも臨場感があります。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (水浅葱ゆきねこ 作)
 
 

■無駄を排した洗練された文章で流れるような戦闘が描かれた作品

今回読ませていただいた作品はどれも素晴らしかったですが、中でも抜群に上手いなと思ったのが雨読さんの無題の作品
他の作品がその場の情景、キャラクターや扱う武器の姿を丹念に描き出しているのに比して、この作品は戦闘描写にとにかく重きを置いています
そして、二人の攻防がたいへん滑らかに展開されるのです。
語彙の幅が広く表現も豊かで、けれど無駄な装飾は削ぎ落とされている洗練された文章
また、語尾が「〜する」 という現在形で繋がれている場面が多いのも特徴で、一文一文の区切りはあっても一連の流れは途切れない、とても滑らか且つ臨場感のある描写に繋がっていました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (雨読 作)
 

■ちょっと捻った 意外なバトルも魅力的

今回のお題は「因縁のラストバトル」。
ですが、中にはかなり捻った作品や、意外な勝負を題材にしたものもありました。
『出紅の種』西瓜の種飛ばし、しかも相手はカッパというちょっと変わったバトルを描いた一つ。
けれど、冒頭の瑞瑞しい西瓜の描写に始まり、体感や力の入れ具合などを巧みに使った種を吐き出す時の一連の動作飛んでいく種の様子などが、とても丁寧に描き出されていました。
おそらくは普通のバトルよりも描くのが難しいものだと思います。
さらに、こういう経験をしたことのある人はそこまで多くはないだろうけれど(私はないです)、それでも描写のひとつひとつに懐かしさを感じさせているのも素晴らしいなと思います。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 出紅の種 (燈真 作)
 
 
さて、森を舞台に他部族からの攻撃を受ける青年を描いた『女王の巡り(序) 』も、他の作品とはちょっと違った雰囲気を持った作品です。
しんとした中にある森の息遣い、少しひんやりとした肌をなでる空気感、そういったものがしっかり伝わってくる描写でした。
聴覚、視覚、嗅覚、触覚など、体全体からしっかりと森の気配を感じられるのが素敵です。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 女王の巡り(序) (たびー 作)
 

■個人的な話だけど、すごく勉強になった2作品

個人的にとても参考になった作品の一つが『さよなら姫将軍』
描写の中でも、皮膚感覚的な描写は女性的だと思うのですが、私は作品のジャンル的に男性的に描かなくてはならないものも、やや皮膚感覚が強めに出てしまうことがあます。
ですが、この作品は「男性的」と言うほど荒々しくはないですが、それでも汗、息の荒さ、体の軋みなど、戦闘に相応しい描写が多かったように思います。
また、闇が襲いかかってくる際の様子は目に浮かんでくるようでした。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - さよなら姫将軍 (三茶 久 作)
 
 
『 セッション 』も、とても勉強になった作品の一つ。
他の作品に比べると装飾が少なめで、内容だけでなく文章もハードボイルド寄りです。
動作や周囲の様子を、感情を遠ざけた客観的な描写で淡々と描き、けれどそこから立ち上がってくる虚無感が作品の切なさを際立たせています
私はこういうハードボイルドよりな作品を書くこともあるし、現在はちょっとミリタリー色の強いものを書いているので、本当に勉強させていただきました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - セッション (犬井作 作)

 

最後に自作について…。

zooeyの無題の作品ですが、少年たちのバスケ対決を描いています。
バトルやスポーツなど動的な場面を描くのは、私にはなかなかに難しいです。
映像が目に浮かぶように描写を濃くしたいタイプなのですが、そうするとスピード感が損なわれてしまうからです。
そこで、私が動きのある描写をしようとする時は、「静」と「動」を分けて描くようにしています。
今回でいえば、ボールをつきながらお互いに睨み合っている時はじっくりと描写し、ドライブを仕掛けるなどの展開があってからは一転して描写を最小限に抑えて動作のみで繋いでいく、というふうに。
ただ、冒頭に説明を入れすぎてしまってバスケシーン自体がとても少なくなってしまい、「静」「動」と分けたこともあって、ちょっと描写そのものが薄くなってしまったように思います。
このあたりの塩梅が上手くできるようにしないとな、と思ったのでした…。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (zooey 作)
 
 
今回は、様々な作品があり、とても勉強になりました。
「描写」とひとくちに言っても、その方法は様々で、丹念に描写するものもあれば、敢えて描写を省く描写も。
五感に訴えかける描写もあれば、情景をしっかりと掬い上げるものも。
皮膚に訴えかける描写もあれば、「体感」全体を通して伝える方法もあります。
そういった色々な描写ができる力を身につけることで、全体の描写力の向上が可能になるのだろうな、と思いました。
 
また、中には会話劇やショートショート風味の作品もあり、自分の「描写」というものの認識がひどく狭いものだったのだろうな、と感じたりもしました。
もう少し頭を柔らかく、様々な種類の描写を取り入れて、より良いものが書けるようになるといいなと思ったりしたりしたのでした。

「小説家になろう」で参加している企画について。「描写」に関心のある人はぜひぜひ!

実は、私、小説家になろうカクヨムというサイトで小説みたいなものを書いたりしています。

そして、最近、「なろう」の方で「描写力アップを目指そう」と題した企画に参加させていただいて、とても勉強になっています。
【習作】描写力アップを目指そう企画

で、せっかくなので、今回の企画の作品のことに触れつつ、描写に関していろいろ考えたことを書いていきたいと思います。
と言いつつ、時間がなくて、まだ半分程度しか読めていないので、読んだ分だけ。
すべて読み切ったら後半の作品についても書きたいと思います。
私の作品は後半の方なので、自作についても、次回、少し触れたいと思います。

因みに、今回は第2回の「因縁のラストバトル」の描写。
こちらについて書いています。


■良い描写のためにはイマジネーションが不可欠! 豊かなイマジネーションにより魅力的な「画」を描いた二作品

良い描写ができるかどうかの最初のポイントは「画」を思い描くことが出来るかどうかのように思います。
特にファンタジーホラーSFといったジャンルは独創的な「画」を思い描くための設定段階で、イマジネーションが大事になってくるように思います。
完全に私が苦手なことです…。

さてさて、恐らくはハチに近い種族?の子どもが背負わされた戦いを描いたのだろう『ロロトレルとリットリル』は、イマジネーションにより素敵な作品となった一つでしょう。
彼らがどういった習性により、どういった姿で、どういった戦いを繰り広げるかが、しっかりと描かれていました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - ロロトレルとリットリル (冴吹稔 作) 

タカノケイさんの無題の作品はSF。
こちらも豊かなイマジネーションにより荒廃した世界での人間とロボットの戦いを描いています。
描写的に見ると、冒頭で宙に浮かぶ「彼女」の姿は世界観を反映していると同時に、語り手の心に映る「彼女」への憧憬が滲んでいて、美しく印象深いです。
また、効果的な比喩が多くあり、独特な「画」を見せてもらえました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (タカノケイ 作) 


■その場の空気感を伝える「五感の使用」と「周囲の様子を掬い上げる方法」

描写の一番のポイントは、その場の空気感を感じられるかになると思います。
それには主に二つの方法があって、一つは五感に訴えかける主観的な描写。
もう一つは、周囲の様子を細やかに掬いあげて文章に落とし込む描写
……かなと個人的には考えています。

今回の作品でこれまでに読んだ中で、前者の五感をうまく用いているなと思ったのが『鬼怨』
味覚にまで訴えかける描写で冒頭から掴まれます。
あとから、味覚に訴えかけてきていたのがなぜなのか、なんとなく分かるような作品なのですが、とにかくその描写の巧みさがミスリードに効果をもたらしていもいました
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 鬼怨 (外宮あくと 作)  


後者のように、周囲の様子をしっかりと掬いあげて文章に落とし込むタイプだなと思ったのは『鼠がり』
雨や泥濘が匂い立ってくるような細やかさで、その場の様子、男たちの雰囲気が巧みに描かれていました。 
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 鼠狩り (青月クロエ 作) 


■この企画で新しく発見した描写の方法… 「郷愁」はとても強い武器になる!

今回の企画作品から、新たに気付かされた描写の方法があります。
誰もが経験したことのある題材で、記憶を呼び起こし、郷愁を誘い、書かれていること以上の映像を見せるというものです。
描写自体がすごく多いわけではないのですが、それでも徒競走を外から眺めたり、走っている時の懐かしい感覚が蘇ってきたのが『光る風のように』
改めて、郷愁というのが作品を描く上で、とても強い武器になるなと感じましたし、それが上手く機能した作品でした。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 光る風のように (キュノ・アウローラ 作) 


■目の前にあるものを描くだけが描写じゃない!

描写と言うと目の前の情景や雰囲気を描くことのように思いがちですが、心象風景を鮮やかに描き出すのも、もちろん描写。
『一迅の風になれ!』馬と一体化したような感覚と、走り抜ける時に心に風が吹いてくるような感じは、まさしく美しい心象風景を見せられた、という感じです。
爽やかで気持ちの良い描写を見せてもらいました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 一迅の風になれ! (さかな 作) 


■バトル描写に不可欠なアクション。動作を一文の中でどう描くかが重要

さて、今回のお題は「因縁のラストバトル」だったわけで、お題を絶妙に捻って描かれた作品もありましたが、やはり王道の「バトル描写」と言えばアクションです。

そのアクション描写で大事になってくるのが、スピード感
『朧月暗晦』は見事にそれを演出することに成功しています。
立て続けに襲ってくる妖魔と、それをどんどん倒していく様子を、一文にギュッと押し込むようにすることで、疾走感が生まれているのです。
一文の中での動作が多く、それが走り抜けるような(実際走り抜けてますし)疾走感に繋がっています
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 朧月暗晦 (観月 作) 


同じく、一文の中に多くの動作を含ませるものでも『瞬きの合間に』は、普通ならば「。」 で区切ってあるような文章を「、」で繋いでいます
短い中に動作をギュッと押し込むのとは、また違う方法です。
これは疾走感とは逆の、滑らかな動きというのを、とても良く表現していると思います。
洗練された動き、というのが目に見えるようでした。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 『瞬きの合間に』 (梨鳥 ふるり 作)   


■バトルの様子を丹念に描くのが「バトル描写」なわけではない! 一瞬を描き出すことも、限られた描写の中で上手くその様子を伝えることもできる

バトル描写を上手く、と思うとどうしてもそのバトルを細かに描こうとしてしまうものですが、『刹那の花』は剣が交わる「刹那」そのものを描写によって表現しています。
一瞬の戦いを一瞬として描くことができる、というのはかなりカッコイイなと思いました。
まねしたくてもなかなかできない類の描写だなと感じ、ひたすらすごいと思ってしまいました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 『刹那の花』 (八雲 辰毘古 作)
 
さて、だいぶ話題が変わりますが、第三者の視点からバトルを描写することは難しいです。
先に述べたように、描写には五感を使った表現が効果的ですが、体の感覚を使うのは非常に主観的な方法です。
だから、第三者の視点や神視点で描かれているものは、五感による描写に制限ができてしまうのです。
視覚かあるいは多少の聴覚くらいしか使えなくなってしまいます。
そういう中で、上手く「ごっこ遊び」の最中の戦い? を描いていたのが『魔王ごっこ』
視覚による説明だけで、どういう組み合いになっているかが分かりました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 魔王ごっこ (SH 作)



読んだもの全てに触れることができなくて申し訳ないです…。
でも、ここに書いていないものも、上手く言葉にならなかっただけで、とても素敵な作品ばかりです。
もし、「小説家になろう」を利用している方がこのブログをお読みだったら、ちょっと覗いてみると、良い作品、良い書き手の方と出会えるのではないかなと思います。

では、時間がかかりそうな気がしますが、続きはまた今度に…。

メキシコを代表する映画監督アルフォンソ・キュアロンの描く映像美と心の旅路

※他サイトからの転載です。


近年、映画界ではメキシコ人監督が大活躍しています。
アカデミー監督賞を2年連続で受賞する快挙を成し遂げた呪文みたいな名前の監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥや、カルト的人気を誇り日本にもファンの多いギレルモ・デル・トロ

ですが、私のイチオシはなんと言ってもアルフォンソ・キュアロン
彼は母国でも活躍しながら、メジャー大作も手がけてハリウッドへ大変な貢献をし、そしてメキシコ人監督として初めてのアカデミー監督賞を手にした素晴らしい功績の持ち主。
そんな彼を作品と共にご紹介したいと思います。


■キュアロン監督の最強の相棒、撮影監督のエマニュエル・ルベツキ

キュアロン監督について語るために言及せずにはいられない人物がいます。
エマニュエル・ルベツキです。
キュアロンは、大学時代に撮影監督のルべツキと出会い、その後の全作品でタッグを組むこととなります。
 
自然光を取り入れた詩情溢れる映像長回しの技術で知られるルベツキは、臨場感と心の旅路を大切にするキュアロンの作風にぴったりでした。


こちらはルベツキの手がけた作品をまとめたトリビュート動画


キュアロンとルベツキの出会いは、後にキュアロン、ルベツキ共に初オスカーに輝いたゼロ・グラビティで映画史に革命をもたらします。
 

■世界にその名を知らしめた青春映画の傑作『天国の口、終わりの楽園。』

キュアロンが、一番はじめに世界的な注目を浴びたのは母国メキシコで撮った天国の口、終わりの楽園。』でしょう。

あらすじはこんな感じ。


高校を卒業したばかりの2人の少年、フリオとテノッチ。それぞれの恋人がヨーロッパへのバカンスへ出かけたため、2人は性欲を持て余していました。そこでとあるパーティで出会った人妻の気を引こうと「天国の口」というビーチの話をします。はじめは、でまかせであるということが見抜かれて相手にされないのですが、しばらくすると彼女の方からビーチへ行こうと誘いの連絡が来ます。そして、3人は「天国の口」を目指し、体を重ねながら、ひと夏の旅に出かけます。


性に対して解放的で奔放な若者の姿と、自分の人生が決まりきってしまった人妻との対比が、メキシコという土地の元、時にユーモラスに、時に寂しく描き出されています。
真夏の太陽が照りつける大地や海からメキシコそのものをあぶりだした映像
明らかに「くそがき」である二人のやることなすこと全てがキラキラとしていて見事に若い輝きを描き出した点
そしてその輝きが一瞬のものであると示されるラスト
これ以上ないほど素晴らしい青春映画です。
また、現在ではメキシコを代表する若手として有名なガエル・ガルシア・ベルナルディエゴ・ルナの二人をヴェネチア国際映画祭の最優秀新人賞へ導き、世界へ送り出したという点でも賞賛すべきでしょう。
 

■世界一有名? なファンタジー小説から戦争映画ばりの重厚な作品まで

しかし、キュアロン作品で最も有名なのは、もちろんハリー・ポッターとアズカバンの囚人です。

超有名ファンタジー小説の三作目にあたるこの作品は、ファミリー映画の要素が強かった前二作とは趣向を変えて、ユーモアに彩られたダークファンタジーとなりました。
光や風を感じる美しい映像と、少し怖くてそれ以上にユーモラスな世界観がマッチ。
さらに、『天国の口、終わりの楽園。』と同じく、青春映画の趣も強くなり、主人公の精神的な成長も伝わるように描かれていたのも特徴です。
シリーズの中でもたいへん魅力的な一本と言えるでしょう。

その後も精力的に活動を続けます。
2006年には、子どもが生まれなくなった近未来の世界を描いたトゥモロー・ワールドで、荒廃した中に差す一筋の希望を見事に表現。

生命や誕生の神聖さを見る者に焼き付ける映像、そして終盤の一発録りの臨場感は戦争映画にも勝るほどのものになりました。
この作品は内容も技術面もたいへん高い評価を受け、79回アカデミー賞の撮影賞の最有力候補と言われていましたが、同じくメキシコ出身のギレルモ・デル・トロによるダークファンタジーの傑作、『パンズ・ラビリンス』に奪われてしまいます。
 

■映画史に革命を起こした『ゼロ・グラビティ

ですが、ルベツキの撮影賞、そしてもちろんキュアロンの監督賞も、間違いないと太鼓判を押された作品が2013年、ついに登場します。
ゼロ・グラビティです。

息苦しいほどの宇宙の静寂を追体験させる素晴らしい映像は、世界の度肝を抜きました。
スピルバーグジェームズ・キャメロンを初め、多数の映画関係者が、描き出された宇宙空間を絶賛しただけでなく、アポロ11号の乗組員だった人物も、この映画の映像が実際の宇宙空間にかなり近いとして称賛しています。

そして、サンドラ・ブロック演じる女性の心の旅路も見事に表現され、それが宇宙空間のサバイバルと調和していく様は素晴らしいカタルシスに溢れています。
誰もが認める傑作により、キュアロンとルベツキは最高の栄誉を手にしました。
 

キュアロン監督のどの作品にも共通しているのは、ルベツキと共に作り出す美しい映像と、キャラクターの柔らかく繊細な心をスタイリッシュに描き出す点です。
彼の確かな作風は今後の作品にも発揮されていくことでしょう。