Zooey100’s diary

りんごちゃんを育てたり、映画観たり、小説書いたり、フィギュアスケート観たりするアラサーのブログ

メキシコを代表する映画監督アルフォンソ・キュアロンの描く映像美と心の旅路

※他サイトからの転載です。


近年、映画界ではメキシコ人監督が大活躍しています。
アカデミー監督賞を2年連続で受賞する快挙を成し遂げた呪文みたいな名前の監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥや、カルト的人気を誇り日本にもファンの多いギレルモ・デル・トロ

ですが、私のイチオシはなんと言ってもアルフォンソ・キュアロン
彼は母国でも活躍しながら、メジャー大作も手がけてハリウッドへ大変な貢献をし、そしてメキシコ人監督として初めてのアカデミー監督賞を手にした素晴らしい功績の持ち主。
そんな彼を作品と共にご紹介したいと思います。


■キュアロン監督の最強の相棒、撮影監督のエマニュエル・ルベツキ

キュアロン監督について語るために言及せずにはいられない人物がいます。
エマニュエル・ルベツキです。
キュアロンは、大学時代に撮影監督のルべツキと出会い、その後の全作品でタッグを組むこととなります。
 
自然光を取り入れた詩情溢れる映像長回しの技術で知られるルベツキは、臨場感と心の旅路を大切にするキュアロンの作風にぴったりでした。


こちらはルベツキの手がけた作品をまとめたトリビュート動画


キュアロンとルベツキの出会いは、後にキュアロン、ルベツキ共に初オスカーに輝いたゼロ・グラビティで映画史に革命をもたらします。
 

■世界にその名を知らしめた青春映画の傑作『天国の口、終わりの楽園。』

キュアロンが、一番はじめに世界的な注目を浴びたのは母国メキシコで撮った天国の口、終わりの楽園。』でしょう。

あらすじはこんな感じ。


高校を卒業したばかりの2人の少年、フリオとテノッチ。それぞれの恋人がヨーロッパへのバカンスへ出かけたため、2人は性欲を持て余していました。そこでとあるパーティで出会った人妻の気を引こうと「天国の口」というビーチの話をします。はじめは、でまかせであるということが見抜かれて相手にされないのですが、しばらくすると彼女の方からビーチへ行こうと誘いの連絡が来ます。そして、3人は「天国の口」を目指し、体を重ねながら、ひと夏の旅に出かけます。


性に対して解放的で奔放な若者の姿と、自分の人生が決まりきってしまった人妻との対比が、メキシコという土地の元、時にユーモラスに、時に寂しく描き出されています。
真夏の太陽が照りつける大地や海からメキシコそのものをあぶりだした映像
明らかに「くそがき」である二人のやることなすこと全てがキラキラとしていて見事に若い輝きを描き出した点
そしてその輝きが一瞬のものであると示されるラスト
これ以上ないほど素晴らしい青春映画です。
また、現在ではメキシコを代表する若手として有名なガエル・ガルシア・ベルナルディエゴ・ルナの二人をヴェネチア国際映画祭の最優秀新人賞へ導き、世界へ送り出したという点でも賞賛すべきでしょう。
 

■世界一有名? なファンタジー小説から戦争映画ばりの重厚な作品まで

しかし、キュアロン作品で最も有名なのは、もちろんハリー・ポッターとアズカバンの囚人です。

超有名ファンタジー小説の三作目にあたるこの作品は、ファミリー映画の要素が強かった前二作とは趣向を変えて、ユーモアに彩られたダークファンタジーとなりました。
光や風を感じる美しい映像と、少し怖くてそれ以上にユーモラスな世界観がマッチ。
さらに、『天国の口、終わりの楽園。』と同じく、青春映画の趣も強くなり、主人公の精神的な成長も伝わるように描かれていたのも特徴です。
シリーズの中でもたいへん魅力的な一本と言えるでしょう。

その後も精力的に活動を続けます。
2006年には、子どもが生まれなくなった近未来の世界を描いたトゥモロー・ワールドで、荒廃した中に差す一筋の希望を見事に表現。

生命や誕生の神聖さを見る者に焼き付ける映像、そして終盤の一発録りの臨場感は戦争映画にも勝るほどのものになりました。
この作品は内容も技術面もたいへん高い評価を受け、79回アカデミー賞の撮影賞の最有力候補と言われていましたが、同じくメキシコ出身のギレルモ・デル・トロによるダークファンタジーの傑作、『パンズ・ラビリンス』に奪われてしまいます。
 

■映画史に革命を起こした『ゼロ・グラビティ

ですが、ルベツキの撮影賞、そしてもちろんキュアロンの監督賞も、間違いないと太鼓判を押された作品が2013年、ついに登場します。
ゼロ・グラビティです。

息苦しいほどの宇宙の静寂を追体験させる素晴らしい映像は、世界の度肝を抜きました。
スピルバーグジェームズ・キャメロンを初め、多数の映画関係者が、描き出された宇宙空間を絶賛しただけでなく、アポロ11号の乗組員だった人物も、この映画の映像が実際の宇宙空間にかなり近いとして称賛しています。

そして、サンドラ・ブロック演じる女性の心の旅路も見事に表現され、それが宇宙空間のサバイバルと調和していく様は素晴らしいカタルシスに溢れています。
誰もが認める傑作により、キュアロンとルベツキは最高の栄誉を手にしました。
 

キュアロン監督のどの作品にも共通しているのは、ルベツキと共に作り出す美しい映像と、キャラクターの柔らかく繊細な心をスタイリッシュに描き出す点です。
彼の確かな作風は今後の作品にも発揮されていくことでしょう。