Zooey100’s diary

りんごちゃんを育てたり、映画観たり、小説書いたり、フィギュアスケート観たりするアラサーのブログ

「小説家になろう」で参加している企画について②

さてさて、前回の続きで、「描写力アップを目指そう」企画の感想です。
詳細はこちら↓
【習作】描写力アップを目指そう企画
早速書いていきます。

■視覚よりも、さらに映像を浮かび上がらせる聴覚による描写

その場の画を彷彿とさせるためには、視覚を中心にした描写をすべきかと思いがちな気がします。
ですが、実は聴覚をうまく使うと、視覚に訴えかける以上に、ありありとその場面の映像が浮かび上がってくることがあります。
『落日のディーランドジア』はその良い例です。
冒頭のオノマトペから兵士の踏み鳴らす足音、上げる声、そしてラストの静寂の中の鷹の鳴き声まで、空間の広がりがたいへん良く表れていて、映像がぱっと脳裏に浮かんできます。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 落日のディーランドジア (七ツ樹七香 作)
 
 

■ ファンタジーでは、特有の「生き物」を描き出すことで世界観が立ち上がってくる

前回も書きましたが、ファンタジーの描写には想像力が不可欠。
中でも、ファンタジーならではの生き物、種族の姿や雰囲気が、読み手の目に浮かんでくるようなものだとワクワクしてくるでしょう。
葵生りんさんの無題の作品で描かれる竜兵は、その姿、出で立ちもさることながら、あげる声、石のような態度などがよく描かれていて、ありありと浮かんできました
また、その竜兵の姿や様子が(描写企画にアップされている部分だけで言えば)作品の魂に関わっていく重要な要素となっていて、描写が作品そのものをしっかりと支えている良い例だと思います。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (葵生りん 作)
 

同じく、ファンタジーならではの生き物の姿をありありと映し出したのが『竜剣鍛製』
竜が好むとされる血の臭いから始まり、その巨躯が落とす陰や、眼、爪などに竜が纏う不吉さが表れていて、作品の雰囲気を作り出していました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 竜剣鍛製 (Veilchen 作)


■「画」の面白さにも色々ある!

前項でも触れた、描こうとする「画」の面白さが『煩わしき六の縁』では爆発。
特に龍の姿をした奔流と大きな火との対峙はたいへんダイナミックです。
描写もそれに見合ったもので、非常に細やかな皮膚感覚で描いている作品が多い中、戦闘描写はかなりドライ
特に動きのある場面では、装飾はあまりなく、短文や単語を重ねる傾向があるように思います。
それによって、スピード感と力強さを損なわせないようになっています。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 煩わしき六の縁 (甲姫 作)/ 
 

一方、誰もが目にしたことのある王道の「画」を臨場感たっぷりに描くのも、もちろん心が踊ります。
水浅葱ゆきねこさんの無題の作品は、まさにそういう作品。
特に、炎の剣の描写は、例えばドラゴンクエスト』の世界で描かれる「画」―――これが皮膚の感覚までしっかりと捕らえながら鮮やかに蘇ってきて、読んでいて非常にワクワクします。
冒頭の「浮遊感」「落下感」などの体感から始まるところにも臨場感があります。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (水浅葱ゆきねこ 作)
 
 

■無駄を排した洗練された文章で流れるような戦闘が描かれた作品

今回読ませていただいた作品はどれも素晴らしかったですが、中でも抜群に上手いなと思ったのが雨読さんの無題の作品
他の作品がその場の情景、キャラクターや扱う武器の姿を丹念に描き出しているのに比して、この作品は戦闘描写にとにかく重きを置いています
そして、二人の攻防がたいへん滑らかに展開されるのです。
語彙の幅が広く表現も豊かで、けれど無駄な装飾は削ぎ落とされている洗練された文章
また、語尾が「〜する」 という現在形で繋がれている場面が多いのも特徴で、一文一文の区切りはあっても一連の流れは途切れない、とても滑らか且つ臨場感のある描写に繋がっていました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (雨読 作)
 

■ちょっと捻った 意外なバトルも魅力的

今回のお題は「因縁のラストバトル」。
ですが、中にはかなり捻った作品や、意外な勝負を題材にしたものもありました。
『出紅の種』西瓜の種飛ばし、しかも相手はカッパというちょっと変わったバトルを描いた一つ。
けれど、冒頭の瑞瑞しい西瓜の描写に始まり、体感や力の入れ具合などを巧みに使った種を吐き出す時の一連の動作飛んでいく種の様子などが、とても丁寧に描き出されていました。
おそらくは普通のバトルよりも描くのが難しいものだと思います。
さらに、こういう経験をしたことのある人はそこまで多くはないだろうけれど(私はないです)、それでも描写のひとつひとつに懐かしさを感じさせているのも素晴らしいなと思います。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 出紅の種 (燈真 作)
 
 
さて、森を舞台に他部族からの攻撃を受ける青年を描いた『女王の巡り(序) 』も、他の作品とはちょっと違った雰囲気を持った作品です。
しんとした中にある森の息遣い、少しひんやりとした肌をなでる空気感、そういったものがしっかり伝わってくる描写でした。
聴覚、視覚、嗅覚、触覚など、体全体からしっかりと森の気配を感じられるのが素敵です。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - 女王の巡り(序) (たびー 作)
 

■個人的な話だけど、すごく勉強になった2作品

個人的にとても参考になった作品の一つが『さよなら姫将軍』
描写の中でも、皮膚感覚的な描写は女性的だと思うのですが、私は作品のジャンル的に男性的に描かなくてはならないものも、やや皮膚感覚が強めに出てしまうことがあます。
ですが、この作品は「男性的」と言うほど荒々しくはないですが、それでも汗、息の荒さ、体の軋みなど、戦闘に相応しい描写が多かったように思います。
また、闇が襲いかかってくる際の様子は目に浮かんでくるようでした。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - さよなら姫将軍 (三茶 久 作)
 
 
『 セッション 』も、とても勉強になった作品の一つ。
他の作品に比べると装飾が少なめで、内容だけでなく文章もハードボイルド寄りです。
動作や周囲の様子を、感情を遠ざけた客観的な描写で淡々と描き、けれどそこから立ち上がってくる虚無感が作品の切なさを際立たせています
私はこういうハードボイルドよりな作品を書くこともあるし、現在はちょっとミリタリー色の強いものを書いているので、本当に勉強させていただきました。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - セッション (犬井作 作)

 

最後に自作について…。

zooeyの無題の作品ですが、少年たちのバスケ対決を描いています。
バトルやスポーツなど動的な場面を描くのは、私にはなかなかに難しいです。
映像が目に浮かぶように描写を濃くしたいタイプなのですが、そうするとスピード感が損なわれてしまうからです。
そこで、私が動きのある描写をしようとする時は、「静」と「動」を分けて描くようにしています。
今回でいえば、ボールをつきながらお互いに睨み合っている時はじっくりと描写し、ドライブを仕掛けるなどの展開があってからは一転して描写を最小限に抑えて動作のみで繋いでいく、というふうに。
ただ、冒頭に説明を入れすぎてしまってバスケシーン自体がとても少なくなってしまい、「静」「動」と分けたこともあって、ちょっと描写そのものが薄くなってしまったように思います。
このあたりの塩梅が上手くできるようにしないとな、と思ったのでした…。
【習作】描写力アップを目指そう企画 - (zooey 作)
 
 
今回は、様々な作品があり、とても勉強になりました。
「描写」とひとくちに言っても、その方法は様々で、丹念に描写するものもあれば、敢えて描写を省く描写も。
五感に訴えかける描写もあれば、情景をしっかりと掬い上げるものも。
皮膚に訴えかける描写もあれば、「体感」全体を通して伝える方法もあります。
そういった色々な描写ができる力を身につけることで、全体の描写力の向上が可能になるのだろうな、と思いました。
 
また、中には会話劇やショートショート風味の作品もあり、自分の「描写」というものの認識がひどく狭いものだったのだろうな、と感じたりもしました。
もう少し頭を柔らかく、様々な種類の描写を取り入れて、より良いものが書けるようになるといいなと思ったりしたりしたのでした。